10.武士の情け

早朝6時玄関のチャイムが鳴る。寝ぼけ眼で玄関を開けると これまた、寝巻き姿の友達Uが話がある)と言う。

その話とこうだ!、 昨夜、交差点で信号待ちしている時、追突されたと言う。

で、車の外に出ると追突してきた相手も出てきて謝りながら、 (車の修理補償はするので何卒穏便に と。

Aは修理補償してくれるなら 事故扱いにしないで解決しようと相手に名刺か免 許証の提示を求めた。

すると相手が「今日は名刺を持ってないので連絡先と免許証を・・」 と財布から免許証を取り出そうとしたと同時に、

数枚の名刺らしきものがパラパラと 落ち、それを拾う手伝いをしようとして、その一枚を手にして驚いた。

それはあきらかに名刺で、それには(宮崎県警察〇〇長 B)と刷りこんで あったのである。

「あんた!さっき名刺は持ってないと言ったけど、これ!あんたの名刺やろ! あんた警察の人? と問いただすと

「すみません!すみません!」と 何度も頭を下げたと言う。それだけならまだ良かったのだが・・

「うむ!酒臭い!あんた酒飲んでるね?」となったのである現職の警察のお偉方が 飲酒運転で追突事故。

さぁ大変な事が起きてしまったのである。Aは対応を迷い、 翌早朝、我が家に飛び込んで来たのである。

「相手の歳は幾つぐらいね?」「多分、50代ぐらいだったと思う」 「で、どうしたいの?」 「自分でもどうしていいか判断がつかんのですわ。

ご迷惑でしょうけど、 すべて先生にお任せしますから、話付けてくれんですか!」となったのである。

私は加害者B本人に会うべく警察署に。  受付で「〇〇長のBさんをお願いします。」

「〇〇長!長谷場と言う人が尋ねて来ていますが・・・さぁ?分かりません。 電話変わります」と。

電話変わって、「何処の長谷場さん?私覚えがないけどねぇ」 チト態度がデカイ!

「はい!実は昨夜のことで ちょっと・・」と言うと態度が一変 「あっ! はい! はい!分かりました。すぐ降りてきます。」

電話の向こうでは慌てている様子。 「どうも! どうも!」 平身低頭、B氏は現れた。

近くの喫茶店に行き早速   「昨夜は大変でしたねぇ!しかも、お酒を飲んでの飲酒運転!ダメじゃないですか!

警察の人が、こんなことでは・・・」 「あ、はい!宴会があったもんで少しだけ・・・」 身体が震えている。

「そんなに緊張せんでください!私は少林寺会館の長谷場と言う者で、 決して怪しい者ではありませんから・・・実はね、

U氏は私の友達で 自分では対応できないので私に仲裁してくれと今朝頼みに来たんですよ。

で、私も一度貴方に会って話し聞いてみようと思って出てきたんですよ。 貴方はどうしたらいいと思います?

私の仲裁でよろしいでしょうか? 他に代理の方を 頼まれても宜しいですよ!」 「いいえ私も宜しくお願いします」となった。

「もう定年前ですか?」「ハイ!そうです。」 「ご家族は?」 「ハイ!妻と大学に行っている子供たちが・・・

あの~ 出来ましたらどうか穏便に!解決していただけないでしょうか?」 「そうですね!これが表沙汰になったら大変でしょうねぇ。

懲戒免職で退職金はパァ! ぶっつけた相手が良かったですわ。じゃこうしましょう!高いか安いか分かりませんが、

相手の車の修理代慰謝料込みで50万!で如何でしょうか!」 「あ、はい!そ、それで宜しいでしょうか?あ、ありがとうございます。

ありがとうございます。」と涙流さんばかりに何度も何度も頭下げられた。 「武士の情けちゅうやつですよ。

正直言って本当はすごく腹がたっているのですよ! これがもし逆だったらと思うと・・・」後日示談が成立した。

この話をB氏の名前を出さずに第3者の意見を聞くと、 「え~っ!たったの50万、100万ふっかけても払ったのにぃ

いいや  300万、500万でも払ったかも!」と外野は言いたい放題!   さて、このそれぞれの当事者が貴方だったらどうしましたか?

と 問いたいところ・・・行列のできる法律相談所の伸介に相談したらまた、 ユニークな裁定がされるかも! 何? いつの話かって?

時効 時効!  ある日の事。自分が郵便局で用件を済ませ30m先の銀行に行くため、

銀行はそこと言う油断があってシートベルトを締めずに車を動かした。

そのわずか30mの間に おまわりさんに止められ、シートベルト装着違反で 違反切符をきられた。

俺には、武士の情けのかけらもなかった。複雑な気持ち!

それでいい それでいい!