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米村 明彦 | 少林寺会館
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米村 明彦

米村明彦

 我以外皆師也

私が三股から本部と田野道場に通っていた頃の話です。その田野道場に『我以外皆師也』を私の座右の銘にした1人、当時小学2、3年生ぐらいのF君と言う少年がいました。このF君、特別強いというわけでなく、むしろその逆の少年でした。

しかし、練習に対する姿勢は目をみはるものがあり、気迫・気合は人一倍、ほとんど練習は休まないので、たまに休むと道場が寂しくなるような少年でした。
選手権大会にも必ず参加していましたが、前述のような少年でしたので、1回戦突破がなかなかできないのです。次の大会もダメでした。しかし、彼はメゲないのです。
そして、彼の努力が実を結ぶ時が、彼の小学生最後の選手権大会でやってきたのです。

三度目の正直、ついに1回戦に勝ったのです。その時の彼の笑顔は20年以上たった今でも忘れることはできません。
私自身、自分の油断により、一度昇段試験に落ちておりますが、その落胆した私を励ましたのは誰あろうF君のその直向(ひたむき)な練習態度だったのです。こんな小さな少年に負ける訳にはいかないと考えた私は、その後は虚仮(こけ)の一念、尚一層の努力をしました。

その結果、6ヵ月後の再試験の組手においては5人の相手をノックアウト、もしくはそれに近い状態で勝つことができました。さらに最大の難関でもある3分5ラウンドのサンドバック相手のスパーリングも難なくクリアーし、そして黒帯になったのです。

この時、初めて宮本武蔵のいう『我以外皆師也』の意味を自分なりに理解できたような気がいたしました。その後、彼は高校まで空手を続けたということでしたが、私も都城三股支部長になりF君と会う機会もなくなりました。彼と最後に会ったのは15年ほど前の当会館の選手権大会でした。年のはなれた末の弟の応援に来たという彼の顔には、小学生当時のあどけない面影は消え、(当時の田野支部長であった楠原先生から「Fだよ」と教えてもらう迄わからないほど)逞しい青年になっていました。私が当時励まされていた事を話すと、彼は恥ずかしそうに「僕はそんな大それた人間じゃありませんよ」と答えたことを覚えています。
猛暑の夏、極寒の冬、空手の練習がつらいとき、また、なかなか思いどおり上達-昇級昇段しないときなど、いろいろなことで空手がやめたくなることは皆さんにもよくあると思いますが、くじけず頑張ってください。
あなたが挫折しそうになったときは、あなたの周りを見回してください。あなたの近くにも何かを教えてくれる小さな“師”がいるかもしれません。

 押忍!

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