17.実戦

館長は実戦の経験は? と聞かれることがある。 実戦 何処までを実戦と言うか!

選手権大会なども実戦と言えば実戦になるのかな。 けど あれは競技でルールがある実戦だ。 

お尋ねの実戦は多分、ルールのないケンカと言う事になるのだろう。問われれば懐かしい

若かりし頃の青春時代 いろいろな出来事に巻き込まれたもんだ!、


(涙橋) 

涙橋と聞いて あぁ~ と言う人は古い人間になるのかも^^ 東京は台東区にある、俗にいう

山谷街。荒川区千住から墨田区向島に行く時、必ず通らなければならないのが涙橋交差点のある

山谷街(この山谷は 大阪の釜ヶ崎と同じで、一昔前は、夏になるとちょっとしたキッカケが、

引き金となって、必ずと言っていいほど暴動が起きていた。この山谷の早朝は仕事を求める労務

者達を手配師が集めにくるのだ。仕事にあふれた者は 一日中ぶらぶらか酒でその日暮らしに)

まぁ、そんな所だから常識の通らないことも だから ちょっとした引き金で暴動になることも 

よくあったが そう言えば昨今は聞かない。

さて、向島百花園の近くに 墨田道場があり師匠の玉得先生と林先輩(墨田道場の師範代)と

俺いらは稽古の指導に行く。 その帰り路。涙橋交差点に差し掛かる。信号は赤 赤が青に変り林さんが

車をスタートしようとしたところ、車の前を鉢巻しめたダボシャツ親父が、ふらふらしながら邪魔を! 

すると 師匠がその男に「馬鹿も~~ん!」と大声で一括。 それが悪かった。

その男は こっちを睨み 「なにをっ!」と、車の前に立ちふさがり ボンネットをかかえる様に揺さぶりだした。

それを見ていた近くの仲間???まで寄ってきて加勢。・・・と林先輩が

「この野郎っ!」と外へ飛び出して行った。殴り合いが始まった。師匠が「大和 林が危ない止めろ!」と。

私も飛び出し 掴み合いになってる彼らを止めようとした・・ら・・いきなり横から ボカッ!と殴られた。

他人のケンカを止めるどころじゃない。切れた私は お返しに一発の正拳突きを打ち込んだ!

交差点で乱闘が始ってしまった。パッパァ~ プ~ 後ろでは車のクラクション 車が並びだした。

師匠も車から降りてきて「やめろ! 止めんか!」と叫んでいるが 俺いら達に その声が聞こえる筈がない!

すると、どこから来たのか7~8人の警察官たち来て 俺いら達を引き離す。

鉢巻き親父達は、警察官達にも喰ってかかる。

状況から言えば、とに角 車の移動が先で 師匠が「林 お前は先に帰れ! 後は俺と大和が残ればいい」と。

俺いらと師匠は警察官に連れられ涙橋交番へ連行される。 勿論 鉢巻おやじや仲間たちも!

いつの間に何処から集まったのか群集が! 皆でぞろぞろ交番へ。すると

「おい!お前ら山谷を舐めるんじゃねぇ~ぞ!」「覚悟しろ!」とヤジが。交番へ着くと、すぐ

パトカーへ乗せられ隣街の南千住の警察署へ移動。(後で分かったことだが あのまま涙橋交番

で取り調べしていたら 暴動に発展する可能性があり それを心得た警察の手っ取り早い対応だったとか)

成る程! 感心している場合じゃない ケンカの原因になったことの取り調べである。 

警察では皆バラバラになって調べられた・・が・・その前に師匠が そ~と「絶対殴ったとは言うな!」

と耳打ちしたので 警察官が「何発殴ったか?」と聞くが 俺いらは「止めただけだ!」と答えた。

すると また警察官が「 向こうは 殴られた 殴られたと言うている。 いやぁ~

あんなヤッらは 少しぐらいは殴ってもいいのよ! 2~3発? 4発?」とカマかけてきた。

「いいえ 私は止めただけです」と。

そのうち 師匠がどう言う話をしたのか 帰っていいと言うことで開放された。 

奴らは泊まりになったらしい。


(三ノ輪電)

空手友、安形一郎と深夜下宿先の道場へ帰る途中。三ノ輪電の駅を(ホームは歩道にもなっている)

ほろ酔い気分で歩いていると 向こうから二人連れが歩いて来る。すれ違いに どちらからともなく

チラッと目を合わす。そのまま5~6歩 過ぎた所で またお互い振り向き様にチラッと!その時、

ちょっと嫌な予感が! 俺いらが「来るね!」と 安形が「うん!来る!「どうする?「やるか!」

「来ればやる」「よし!」と。 

すると 案の定 後ろの方から 「おい こら 待たんか!」ときた。

俺いらと安形は「どうする!「やるか」と再度 意思を確認。 振り向いて「なんじゃぁ~」と。

どちらからともなく 近づいていく 。距離が縮まり お互い暫く にらみ合いに! 

すると向こうが 「何じゃ~お前らぁ~」と。 「あ~ん? 呼び止めたんは お前らやろうが!」

「なんやとぉ お前ら やるんか?」「おう 上等や やるんやったら やったろうやないか!」

売り言葉と買い言葉の掛け合いに! その時 背高の男が

「そうかぁ なら 相手になってやろう だがな ここは俺達の島内じゃねぇんだよ 悪いが

ちょっと そこまで付き合ってくれや!」

「おう!何処でも行ってやろうじゃないの!」と 場所を変えることに! 歩きながらも

「安形 油断するなよ!」「分かってる!」と。 

大分歩いた。 ちょっとヤバイことになりそうな! で 俺いらは

「おい こら!もう此処まで付き合えば充分やろ いいかそこのガードの下に行けば始めるぞ!)と! すると背高の方が 

「分かったよ! ところでお前ら ちょっと此処で待っててくれや!」「何んで?」

「俺今、手痛めてんだよ ちょっと兄貴呼んでくるからさ ちょっと待・・・」

とその言葉が終わらないうちに 俺いらが 安形から借りていたカーデガンを脱ぎながら 

「この卑怯モンがぁ~~」と叫んだ・・・ら・・・その瞬間 あ、お、えっ!

二人は弾けるように パァと二手に分かれて逃げた。 一瞬のこと。 安形は背高を追う。

俺いらは背低い方を 何故なら そいつは下駄履いていたから。しかし 脱兎のごとく逃げる男。

やめた! と立ち止った横を 「捕まえるんだ~ぁ」と安形が! 背高をあきらめて こっちを追ってきた! 

「よっしゃ~」 俺いらも再び追うはめに! 深夜の東京の街は街灯で明るい。

その距離10Mぐらいか? 「こら!待てぇ~~」と追いかける二人。必死で逃げる男。

カッ カッ カッ 靴と下駄の音が。・・・と前方で男が転んだ! 小さな四角交差点。

多分彼はそこで一瞬どちらに逃げようかと迷ったのだと思う。その迷いで足が縺れて転んだのだ。

追いつく。ところが不思議なことが起きた。 それは ヤツは立てないのである。立てないまま 

手を付いて地べたを這って逃げている。 腰が抜けるとはこのことか? 俺いら達が

「こら 逃げるな! 止まれっ!」

と声をかけても ヒィ ヒィ ハァ ハァ アスファルトの上を必死に這いながら逃げる。

二人で抱えて抱き起こすが立てないのである。「こら 立たんか!」と。 

空手では時どき逆手を取る稽古もする。で 安形と俺いらはそれぞれが、表と裏で逆手を取って

いるものだから たまらない。 よたよたする彼を連れて移動。

都電が走る線路の脇の石垣に彼を押し付け「こらっ 何で逃げるとか?」と 

「こ こ 怖かったからででです」 

「何? 何言うてるんか! 仕掛けたのはお前等やろうが! おぅ! 

              どっちが先にヤルちゅうかんか? お~っ?」

「じ じ じ 自分達です」「なにっ 聞こえんが 大きな声で答えんかぁ」

「じ じ じ 自分達でです」ガタガタ震えている。

「ここ突いてやろうか?」と拳をみぞおちに当てると 

「ヒ~ィッ! か か 勘弁してください」「それともここか?」と。首を抜き手で突くマネをすると

「ヒ~ッ す す すみません 許してください!」と・・・(もう いいやろ!)と思い

「あのなぁ お前! 今夜は俺達で良かったなぁ 今夜はこのまま帰してやる。 いいか もう一

人の逃げたダチにも言うとけ! あんまりイキがって突っぱるなよ~って! 分かったか!」

「は はい! スミマセン あ ありがとうござあいます スミマセン!」と喋っていると 突然! 

(いたぞ~~ こっちだぁ~ こっちに いたぞぉ~~」と 

怒鳴り声が! 声のする方を見ると 向こうから 4~5人? いや 5~6人?の男達が 木刀か

丸太か こん棒 を手に持って こちらに向って走って来るではないか! (ヤバイ!) 

「安形 逃げろ!」と。 安形は 掴んでいた手を放し逃げかかる。 現れた彼らとの距離をみたら

まだ 距離はあると咄嗟判断! 俺いらは 掴んでいたヤツに一発の突きを入れた。ウッウ~~ッ 

ヤツはスローモウションのように崩れた。 今度はこっちが逃げる番。 逃げろ! 途中の

曲がり角で安形が躓いた。 抱き起こし 再び逃げる。 おかしなもので 人間一旦、逃げにまわると

気持の立て直しが効かない! 逃げるしかないのである。 後ろからは 

「逃がすな~~っ」「捕まえろ~っ」と声が。 逃げて 逃げて 荒川道場の玄関入り口にポケットから鍵を。

ところが これまた 手がガタガタ震えて鍵穴に鍵が差し込めないのである。

それを見かねた 安形が「どれ 鍵貸して 俺が・・」と。 その 間にも カッ カッ カッと

靴音と「いたかぁ~~?」「どっちだぁ~~」「探せぇ~~~」と怒鳴り声が聞こえる。

ガチャ ガチャ 安形も震えて 鍵穴に差し込むことができない。 で 俺いらが「安形 貸せ 俺が!」と交替して

フゥ~と息を吐き 鍵を差し込む。 開いた! 戸を開け 中に入った途端 

間一髪 外をヤツ等が走り抜けて行った。 カッコウが可笑しいのは俺いら達 真っ暗闇の玄関に

屈み込んだままなのだ! クックックッ・・・妙に可笑しいのである 二人で声をころして笑った。

反省 捕まえた彼が地を這うように逃げた格好。俺いら達が鍵が開けられなかった教訓。

人間、逃げにまわれば 腰が立たないちゅうこと!


(シンナーボケ)

深夜12時頃 寒い日だった。妻は仲間達と懇親会 「迎えに来てくれますか?」と電話が。

「いいよ!」と 待ち合わせを橘通り2丁目と決め車庫へ。 車に乗りエンジンかけて出ようとすると

ライトに照らされた道路の反対側に変なヤツが 座り込んで、こちらをジ~~ッと睨んでいる。

??? 何故? どうも様子がおかしい? 不気味だ 怪しい奴? 俺いらが出て行った後? 

俺いらはエンジンを止め 一旦家の中に入り警察へ電話する。

「もしもし 警察ですか?」 「はい 北署です」 「実は怪しいヤツが家の前に」

「あなたは今 どちらから電話をしていますか」「はい 曽師町からですが・・」

「今、掛けている電話番号は何番ですか?」

そんなやり取りに 俺いらは(早く来てくれよ!)イライラ 何故なら迎えに行く筈の妻が寒い所に・・と思うと。

すると今度は「電話を一旦切ってください」ときた。俺いらは電話をきる。

リリ~ン リり~ン 電話が鳴る。「はい もしもし」

「いま先 電話された方ですね!」「はい!」「すぐ そちらにパトカーが向いますので・・・」 俺いらは外へ。

車のドァを開け ライトを照らすと・・その得体の知れない男がスクッと立って いきなり ウオ~~~ッ!

奇声をあげながら 俺いらの方に向って来るではないか! 俺いらは すぐ道路に出て

「待て! 待て! 待たんか!」と待ったをかけるが・・ヤツは俺いらに向って突進 掴み掛かってきた。

ヤバイ! 避けられないと判断 反射的に俺いらは前蹴りを ボクッとヤツの下腹入れた。とヤツは腹を ウッ!と抱え

前屈みに、そこに もう一発顔面に正拳突きを。 ヤツはよろめきながら倒れた。が 肝心なのはここからだ。

中途半端なダメージは反撃をくらう恐れがある。 俺いらは倒れたヤツを押さえつ

けてボディに上から2~3発の突きを入れた。ウ~~ン ウ~ン 唸りながら クソ~ッと。そこへ 男が通りかかる。

俺いらはその人に 「警察に! 警察に!」と声を掛けたがその男はびっくりしたように道路の端をすすり抜けると、

一目散に逃げていった。 考えてみれば そうかも! 

寒い夜中 道路の真ん中で 得体の知れない男達が殴り合いをしていたのだから

係わり合いになりたくないと思ったのだろう・・・。クソ~ッ ウ~~ クソ~ッ男はもがく。

俺いらは また一発。・・・そこへ車が 二人の男が降りてくる。

「警察ですが 連絡くれた方ですかね?」

「はい こいつですよ すみません! 私は すぐ行かなければならない所が! すぐ帰って来ますので・・」と

ヤツを引渡し 妻を迎えに! 次の曲がり角で パトカーと出くわす。

「あっち! あっち!」と指示して! 妻を迎えに行くと「遅いよぉ~~」と事情を知らない妻から怒られた。

家に帰ると男はパトカーが連行したとか。 二人の男は刑事だった。事の経緯を説明。

道路にはビニール袋が散乱していた。その男はシンナーを吸っていたのだ。

後で考えてみたら・・・あれだけ俺いらの突きを喰らいながら(と言っても加減しながら)普通な

ら動けない筈なのに やっぱりシンナーで麻痺していたのか もがいていたあいつ さかんに下から抵抗していた。


(先手必勝)

宮崎駅東通り。バ~ン バババ バ~ン バババ バイクが4台 俺いらの車を追い越す。

危ない!・・と。反射的にクラクションを鳴らした。 すると彼らはUターンしてきた。 自然な成り行きで

俺いらも車を降りる。

(以前 ある弟子が 車と車で揉めて相手が降りてきたのをウィンドーを開けたまま対応して口論

していたら いきなり外から顔面パンチを喰らって歯が何本か折られた事が!)

俺いらは4人に囲まれてしまった。「おっちゃん! 何か用や!」 「ん? 何も!」 

「用があるからクラクション鳴らしたんじゃろが!」

「いや いや あんな運転されたら危ないがねぇ だから ちょっと クラクションを!」

「何か 文句があっとか!」

「いや 文句はないけど・・・あんた達も気をつけて貰わんと!」

「何やとぉ! こりゃ親父 いい歳して 粋がっちょっと怪我すっど お~っ!」

リーダー格の男は もうケンカ腰である。 こりゃヤバイ 避けられない! と判断した俺いらは

「悪かったネ~ッ!」と いきなり相手のボディに一発の正拳突きを喰らわした。

みごとに水月に! ボクッ ウ~~ッ 彼は前つんのめりで倒れた。

一瞬 目の前で起きた出来事に 他の仲間3人は ビックリしてる。 俺いらは すかさず

「お前達も やるかっ!」と そしたら 「い いえ!」 と彼らは 首を横に振りながら後すざり

をする。 ここで もう一発かます。

「お前等 うちの組 (ハッタリで~~~す^^)の事務所に行くか?」と。

こっちの押しのペースに、彼らは完全にビビッている。 多分 今の彼らは 俺いらが何処かの

ヤクザ屋さんと思っているのだろう^^ 自分ながら可笑しいが 嘘も方便 これから彼らは少しは魂が入るだろう。

俺いらは 何事も無かったように!

空手をやっている者が、先に手を出したらイカンでしょうが・・・とお叱りを賜るかも知れないが 

俺いらにすれば誰が決めたの?・・・である。 あのような連中は、弱い者には強い 強い者には弱いもの

先手必勝あるのみ! カッコいいことは言わない やられる前にやれである・・・が

但し見切りが大事である。で なかったら一歩的な暴力になるから!


(実戦にならない実戦1)

リ~~ン リ~~ン 電話で起こされる 夜中の電話は碌な事はない!

「こらっ 長谷場~ッ 貴様 他人の女に手を出して お~っ 只で済むと思ちょっとかぁ?」

寝入りを起こされて ボ~ッとしている時に いきなり この電話である。

「誰か?」「俺は○○会の××じゃぁ~」 ○○会 ある空手団体である。

「こらぁ 出て来い!」 相当酔っている。 他に仲間もいる様子。電話相手が変る。

「長谷場館長ですか? 夜中にすみません うちの××が館長に彼女を取られたと 荒れているもので!

館長 クラブ△の真紀ちゃん知っていますか? 彼女 ××の女なのですよ!」

やっと 頭がすっきり 事情が飲み込めた。

「あぁ 真紀ちゃんねぇ 知っているよ! 彼女とは友達じゃが・・・」

「ですからね 館長 ちょっと出て来てくれんですか?」

「おい おい 今、何時やと思っているのか? 分かった 明日午前10時宮観ホテルのロビーに行くわ!」

次の朝、待ち合わせの場所に行く前に 真紀ちゃんに電話。

「真紀ちゃんか? ××って知ってる? いやね 昨夜 真紀ちゃんが自分の女やぁ 言うて電話

が掛かってきてさ 10時に待ち合わしているんだけど あんたと××の関係を知っておかんと

話ができんからねぇ」「うちは××の女じゃないですよ! 向うが勝手に うちに惚れちょるとですよ!

そうですかぁ うちのことで迷惑かけてスミマセン! うちは先生とは何も無いじゃないですか! 食事ご馳走に

なったり 愚痴聞いてくれたり 先生には お礼言わなきゃならないのに! なんなら うちも

その時間に宮観に行きましょうか?」「いいや 来なくていいよ! それが分かれば 充分や!」

10時 宮観ホテルのロビーに行くと 彼らは4人で 待つていた。

リーダーが 「昨夜は どうも!」「いいや よかよ! んで 何? 真紀ちゃんがどうしたって?」

××が 「あんた 真紀と どう言う関係ですか?」

昨夜の勢いとは 違うのである・・が 他の二人は俺いらを威嚇するように睨んでる。

「あぁ 真紀ちゃんねぇ 彼女はいい女性やなぁ 男にもモテるやろ! どういう関係って

お友達やねぇ 街に飲みに出たら 彼女の店に行くんじゃが それが どうしたの?」

「あれは 俺の女じゃ 最近どうも冷てぇと思って問い詰めたら・・あんたの話が出たんですわ!」

「どんな話が? おれは彼女とは友達って言うてるやろ! あんた それ焼きモチかい? じゃ

言わしてもらうけどさ 彼女は女の魅力を売って商売しているんだよ。 それに文句があれば

(この女は××の女だ 手を出すな)って彼女に名札を付けさせとけばいい そしたら誰も手は出さん

あんたが自分の女と思っているのだったら 面倒みてやれば! 男も女も焼きモチは程々がいい

モチも焼き過ぎると喰えん! 何んなら真紀ちゃんを 此処に呼べばいい」

「・・・・・・」 するとリーダーが

「××よ お前 どうするの? 長谷場館長は こうして わざわざ出てきてる・・・呼びだし

たのは こっちやからな!」と筋の通る話を。「・・・・・」

「館長は 何か言うことありますか?」

「いいや 言うことはないが・・・俺はあんた達の出方次第よ! あんた達が このやろう!って

言えば 俺は(何じゃこの野郎!)って言うだけさ。 逆に済まなかったと言って貰うなら 俺も

悪かったねぇって言うだけさ! 俺はどっちでもいいよ!」・・・と

暫く沈黙が続き・・・彼が スミマセンでした・・・と一件落着! 握手して。 が

この話はここで終りじゃない 種を明かせば その時俺いらの懐には ○○が忍ばせてあった。

使うことにならなくてよかったが・・・彼らは俺いらがそこまで用意しているとは思わなかった

だろうし・・・役者が違う。


キ~~キ~~ッ 車のタイヤのキシム音。夜の街。西橘通り。 ミスタードーナツの前。目の前を車が・・

通行人がいるので車はブレーキかけながら・・・とその後を「待て~ぇ 野郎~ 待てぇ~

~」と4人の男達が追う 車は小さな路地に入ろうとし 曲がり切れなくて止まってしまった。

4人の男達が追いつく。すると 車を外から 蹴るわ 叩くわ 一人の男は車の屋根に飛び乗る。

「出て来い! 野郎 出て来い!」と。 車の中には2人の男が。 それを見た俺いらは咄嗟に

「あれはイカン 村上止めるぞ! 来い!」と駆け足で。まず 車の屋根に乗っている男に

「こら!降りらんかぁ 何やってるんだ! 降りろ!」と! 彼は降りた・・・が 他の男達は外から

車をバンバン叩いている「やめんか!」俺いらの登場に注目しながらも車に向ってヤジを飛ばす。

「宮崎を舐めるんじゃね~~ぞ」

車の中では助手席の男が出ようとするが 運転席の男が必死に止めている。

俺いらが窓を開けさせると「どちらさんかスミマセン!」「それはイイから行け!」っと。

「スミマセン スミマセン」と頭を下げながら去って行った。 

さて 元気のいいお兄ちゃん達は ヤジを飛ばせているが俺いらには何も言わない。

俺いらが睨むと彼らは黙って引き上げていった。4人組みの彼らが ぶっ千切れて

俺いらに向ってくれば当然起きるべきことが起きていただろう。・・があの車 相当凸凹やられていたかも知れない。

ハッと気づいて回りを見ると遠巻きに野次馬が!いっぱい! その中に村上も混じって立っている。

俺いらはてっきり一緒に止めに入っているのだろう・・・と思っていたら! 

コーヒーショップ。

「村上 なんや お前 野次馬と一緒に見学していたんか?」

「あ い いいえ 先生がどんな納めかたをされるのかなと思って!」と

「おい おい こんな場合はお前が先に行き それを止めるのが俺の役目だろうが!

しかしお前冷たいヤッやなぁ ^^」・・・・と この男には よく振り回された。

ある日 これも夜中の電話。その日丁度 妻と出ていて帰ったばかり。風呂に入ろうとすると

「館長ですか! まだ 起きていらっしゃいますか? あ あのですね や矢野さんの店で、ヤクザ

みたいなヤツ等が 暴れているらしいんですわ! すぐ 迎えにいきますから・・・」

「おい おい 何んで俺が行かなならんの? 俺は今、帰ったばかりで 今から風呂に入るちゃが!」

「とに角 迎えにいきますわ!待っててください」 ガチャ! 

(こっちの都合も考えないで) と思ったが来ると言ったまま電話を切ったのだから村上はこっちに

向かっているのだろう。しかし 何や知らないが・・・ヤクザが? 暴れている? と聞き俺いらは

 何が起きるか分からないと判断して 何か道具を持って行った方が!と 道場へ行き木刀をコートの

下に入れるが長すぎて 包丁を? ま、これも構え過ぎ。と 目の前に これはいい・・・という物が!

それをコートの中に隠し 外に出ると村上が奥さんが運転手で。

問題の店に入ると??? 慌てて飛んできた割には 何が何だか分からない。只、店の奥のボックス

席には5人の男達が。俺いら達が入ると 何事も無かったかのように「帰るぞ!」と出て行った。 

村上がいい 彼はふてぶてしい態度で足を投げ出して彼らを睨むのである。そう 俺いらが一緒にい

るから。 訳を聞くと お客同士がモメたらしい その中でヤクザの組の名前やら出て一時は大変だったとか。で

俺いら達が到着する前に一方は出ていったらしい! 俺いら達は居残りと出会った訳だ・・・が

彼らも俺いら達が入って行ったら速さくと出て行った。多分、俺いら達をやっちゃんと間違えたみたい!

その証拠に俺いら達が入ると急におとなしくなったらしい。 それはさて置き

「おい 村上! お前此処に来るのに何か持って来たのかい?」

「何?・・をですか?」「そりゃ いざという時の準備さ だって お前 電話で相当な事 言うてたやないか!」

「先生は 何か 持って来たんですか?」「俺か 俺は これを持って来たんよ!」と コートの中にひそませた物を取り出した。

それを 村上や矢野氏 ママや ホステス皆がじ~~と見る。

「何ですか? それは?」 

「すりこぎや!」(すりこぎ!) ワァハハハ・・・皆一斉に笑った。

今だから笑える話 たかが二本のすりこぎ 投げてよし 叩いて良し 払ってよし 俺いらから

言わしてもらうなら 笑い事じゃない ましてや 何が起きるか分からない時には! 油断大敵 

備えあれば憂いなしちゅうこと!


考えてみれば まぁ いろいろあった。

他にも交通事故の絡んだヤッちゃんとの事。 

同じく右翼が絡んだ頼まれた話。

包丁を持った男 狙われた男に巻き込まれた話 等などまだ話し足り

ないが 又の機会に^^ 随分無茶をしたもんだ。こうして書くと

さも俺いらがが好戦的と思われるかも知れないが

違う 俺いらは平和主義者である。只、俺いらは他人から物事を頼まれる

と断れない性格がある。でも 後年になってからは あまり係わり合いにならないようにしてきた。

他人は頼む時には必死に神様みたいに頼むが 事が終わると知らん顔の者が多い。お礼は求めないが

時に依っては こっちも命をかけなければならないのだ。それが分っていない。 だから今では

「あっしには係わり合いにない事でござんす」と木枯紋次郎でいる。俺いらにまつわる 揉め事の

原因はすべて相手側からの発信である。 俺いらは自分から仕掛けたことはない 今に思えば 只、

若気の至り 若かったという事かな! だがケンカ度胸8分とは よう言うたもの。要は覚悟の問題だ。

だが今なら こちらからすぐにっこり笑い ゴメンナサイ!と 言うだろう! いずれもこのような

ケンカ 争い事は、勝っても負けても あまり気分のいいものではない。

平和が一番!君子危うきに近い寄らず 負けるが勝ち 反省!

こうして今日まで無事でいられるちゅうことは 運が良かったということだろうな!

今回は実戦の経験は?と聞かれたから 答えたまでのこと。