18.館長の目と心(落書き帳より)

酒くらい きげんよく酔い 蛇味をひく
      厳しき恩師  今はなつかし

みまかりし 恩師の墓の 枯れ菊が
       我がご無沙汰 待つがごとくに

それぞれに 連れ添う夫婦 鍋と蓋
       小さき鍋には それなりの蓋

ふたりして 似合いの夫婦と よう云うた
       奴もヤツだが 嚊もカカァ

知らずして 云いたいことを  人は云う
      知らずに云うは 無責任なり

久しぶり 尋ね来た友  懐かしく
       それよりもなお 髪も老いたり

唇の 色あせるまで 水遊び
      故郷の川 友はいずこに

十余年 机並べた 友は今
      かたや予備校 かたや大学

山里に 声は響けど 姿なく
      清武川に ホトトギス鳴く

偉そうに ふんぞり返る 成金が
      金の力で へぼ説教 

しりの穴 小さきあいつ あぁ無情
      あごはでかいが ふところさみし

二次会の 他人のふところ あてにして
      飲むヤツのまね 俺にはできず

風呂あがり つるべ落としの 秋の夕
      我が家はカレー 隣りはうなぎ 

初恋の 文を手渡す 妹は
      仲をとりもつ 十代の恋

拝啓と 書きそのあとは ふんづまりたり
      ペンも進まず 恋もみのらず

悔し泣き 顔面突き 当てられて
      あのクソ坊主 ふるいたつなり

長からぬ 残りし道を 我は今
     何をなすべし 如何に生くべき

駆け抜けた 志士の時代の 男たち
       翔ぶが如くに 我はおよばず

若くして 幕末の志士 みまかりし
      我がことよりも 国を憂いて

男なら かくありたいと 思うけど
     思うばかりで 何もできずに

浪花節 とかくこの世は 住みにくい
     時代遅れの 俺の生きかた

師弟愛 親の心 子は知らず
     求めてやまず 誰がための拳

ひとのいい あいつが昨日 死によった
      神も仏も あてにはならず

人の世の 悲しき運命 いまここに
      残されし娘に 父の面影

過ぎし日は 昔々の 物語
       人の心は 同じにあらず

おとずれし 桜に勝る 君の文
       誠の晴ぞ 拳士ヶ庵

君想い 愛弟子想い 我は今
       他国の雨に 拳理を求む

哀れなり 春を散らせし 乙女達
      摩文仁ヶ丘や ひめゆりの花

リンリンと 我が胸のうち 知るように
       夏の終りの 虫けらさえも

さみしげに うずくまりたる 捨て犬の
       黒き瞳が 胸に残りし

子を抱きて まとわりついて 追いてくる
       北京の乞食  掴み離さず

振り払う 俺の背中に 捨てセリフ
       母と同じに 子も吠えたり

千年の 文化の跡に 真向かいて
       時の流れを 踏みしめて立つ

国ありて 悲劇のあとに 錆びた弾
       盧溝橋に 今も残れり

並びクソ 一人ひとりの マジな顔
       文化の違い ここにみた

やはり居た 北京美人の 楊貴妃が
      我は思わず  振りかえり見る